車窓から流れる景色を眺めながら、ゆったりと時間が過ぎていく鉄道旅行。飛行機のような速さはなくとも、その分だけ旅の過程を楽しむことができるのが鉄道旅行の魅力です。今回は世界中の絶景を楽しめる列車ルートと、鉄道旅行をより充実させるためのガイドをご紹介します。車窓からの絶景を楽しみながら、忘れられない旅の思い出を作りましょう。
目次
1. 鉄道旅行の魅力とは
2. ヨーロッパの絶景列車ルート
3. アジアの絶景列車ルート
4. 北米・南米の絶景列車ルート
5. オセアニア・アフリカの絶景列車ルート
6. 鉄道旅行の計画と準備
7. 車内での過ごし方と楽しみ方
8. 鉄道旅行のマナーと注意点
9. 鉄道旅行に役立つアプリとウェブサイト
10. まとめ:忘れられない鉄道の旅を
鉄道旅行の魅力とは
時間と景色を味わう贅沢な旅
鉄道旅行の最大の魅力は、移動そのものが旅の一部になること。飛行機では見ることのできない地上の風景を、ゆったりとしたペースで楽しむことができます。山々や海岸線、街並みや田園風景など、その土地ならではの景色が車窓を通じて次々と現れては消えていきます。そんな時間の流れを感じながら過ごす旅は、日常を忘れさせてくれる特別な体験です。
環境に優しい移動手段
鉄道は飛行機や自家用車に比べて環境負荷が少ない交通手段です。二酸化炭素排出量が少なく、一度に多くの人を運ぶことができるため、エコな旅を意識する人にとっては理想的な選択肢。近年は環境問題への意識が高まり、「フライトシェイム(飛行機利用への罪悪感)」という言葉も生まれるほど、サステナブルな旅行方法として鉄道が再評価されています。
地元の人々との交流
鉄道旅行では地元の人々と同じ交通手段を利用することで、その土地の生活や文化をより身近に感じることができます。長距離列車では、同じ車両で過ごす乗客との会話が生まれることも。言葉が通じなくても、共に景色を楽しむ気持ちは万国共通です。そんな偶然の出会いが、旅をより豊かなものにしてくれるでしょう。
さまざまな列車の種類と楽しみ方
鉄道旅行には、高速鉄道から山岳鉄道、豪華寝台列車まで様々な種類があります。それぞれに異なる魅力があり、旅の目的や予算に合わせて選ぶことができるのも鉄道旅行の楽しみの一つです。
高速鉄道
新幹線やTGV、ヨーロスターなどの高速鉄道は、都市間を効率的に移動できるのが魅力。短時間で多くの場所を訪れたい旅行者に最適です。
観光列車
景色を楽しむことを主目的とした観光列車は、大きな窓や展望車両を備え、ルート上の絶景スポットでは速度を落として走行することも。車内アナウンスで見どころを解説してくれるサービスも充実しています。
豪華寝台列車
オリエント急行やロイヤル・スコットマン号などの豪華寝台列車は、それ自体が目的地となる究極の鉄道体験。ラグジュアリーな車内設備とサービス、厳選されたルート上の景色を堪能できます。
ローカル線
観光客が少ない地方のローカル線は、その土地の日常風景や暮らしを垣間見ることができる貴重な体験。地元の人々と同じ目線で旅ができるのが魅力です。
デジタルデトックスの機会
常にオンラインでつながっている現代社会において、鉄道旅行はデジタルデトックスの良い機会となります。山間部やトンネルではインターネット接続が不安定になることも多く、そんな時は窓の外の景色に集中したり、持参した本を読んだり、ただ考え事をしたりと、オフラインの時間を楽しめます。
旅の記憶を深める体験
速さを追求しない鉄道旅行では、景色の変化や季節の移ろい、時間の流れをじっくりと感じることができます。そうして得られる体験は、旅の記憶として深く心に刻まれるものです。「あの山を越えた後に広がった海の景色」「夕暮れ時に列車が走った田園風景」など、具体的な風景と共に旅の思い出が残ります。
鉄道旅行者のコミュニティ
世界中には鉄道旅行を愛する人々が数多くいます。SNSやブログ、専門フォーラムなどでは、お気に入りのルートや撮影スポット、乗車体験などの情報が活発に交換されています。こうしたコミュニティに参加することで、鉄道旅行の楽しみはさらに広がります。
持続可能な観光への貢献
オーバーツーリズム(観光公害)が問題視される中、鉄道旅行は持続可能な観光の形として注目されています。既存の鉄道インフラを利用することで地域への負担が少なく、また季節や時間帯によって混雑を分散させることも可能です。地域社会と環境に配慮した旅行スタイルとして、これからますます重要性が高まるでしょう。
鉄道旅行の魅力は、単に目的地へ到達する手段としてだけでなく、「移動そのものを楽しむ」という旅の原点を思い出させてくれるところにあります。次の章からは、世界各地の絶景を楽しめる列車ルートをご紹介していきます。
鉄道旅行を計画する際は、移動手段としてだけでなく、旅の思い出として残る特別な体験として捉えてみてください。窓の外に広がる世界は、あなたの旅に新たな魅力を加えてくれることでしょう。
ヨーロッパの絶景列車ルート
ヨーロッパは世界でも屈指の鉄道網を誇り、歴史的な車両から最新の高速列車まで、様々な鉄道体験を楽しむことができます。アルプスの山々、地中海の海岸線、広大な平原など、変化に富んだ景色を車窓から眺められるのもヨーロッパ鉄道旅行の魅力です。ここでは特に景観が素晴らしいヨーロッパの列車ルートをご紹介します。
グレイシャー・エクスプレス(スイス)
スイスの鉄道旅行といえば、何といってもグレイシャー・エクスプレス。「世界で最も遅い特急列車」として知られるこの列車は、サンモリッツからツェルマットまで約8時間かけて走ります。その間に291の橋と91のトンネルを通過し、アルプスの壮大な景色を堪能できます。
運行情報とベストシーズン
• 運行期間: 通常5月から10月(冬季は特別運行あり)
• 所要時間: 約8時間
• ベストシーズン: 6月〜9月(山々の緑が美しい)、12月〜3月(雪景色を楽しむなら)
• 予約方法: 予約は必須で、3〜6ヶ月前からの予約がおすすめ
見どころ
• オーバーアルプ峠: 海抜2,033mの峠越えは圧巻の景観
• ランドヴァッサー高架橋: 谷間に建つ6つのアーチが美しい高架橋
• ローヌ氷河: 列車が通る中で最も印象的な氷河の眺め
• マッターホルン: ツェルマット近くで見える象徴的な山
旅行者へのアドバイス
窓側の席を確保することが重要です。右側と左側で見える景色が異なるため、往復乗車するのもおすすめ。パノラマ車両からの眺めは最高ですが、通常車両でも十分に景色を楽しめます。また、列車内には解説付きのアプリがあり、現在地と見どころの情報を提供しています。
ベルニナ・エクスプレス(スイス・イタリア)
ユネスコ世界遺産にも登録されているベルニナ線を走るこの列車は、スイスのクールからイタリアのティラーノまでを結びます。最高地点は海抜2,253mで、アルプスを越えるルートの中で最も高所を走る列車として知られています。
運行情報とベストシーズン
• 運行期間: 通年
• 所要時間: 約4時間
• ベストシーズン: 5月〜6月(雪解け後の新緑)、9月〜10月(紅葉)
• 予約方法: 繁忙期は要予約(特にパノラマ車両)
見どころ
• ブルジオの渦巻き橋: 列車が360度回転しながら高度を上げる技術的傑作
• ベルニナ峠: 雄大な氷河と湖の眺め
• パロス湖: エメラルドグリーンの湖面に映る山々
• ヴァルポスキアーヴォ渓谷: イタリア側に下る際の美しい谷の風景
旅行者へのアドバイス
パノラマ車両は天井まで広がる大きな窓が特徴で、山岳風景を存分に楽しめます。夏季は特に混雑するため、早めの予約がおすすめ。クール〜サンモリッツ間のアルブラ線と組み合わせると、1日でアルプスの絶景を2つ楽しめます。
フロム鉄道(ノルウェー)
ノルウェーのミルダール駅からフロム駅までを結ぶ約20kmの短い路線ですが、標高差866mを一気に下る険しい山岳路線として世界的に有名です。雄大なフィヨルドの風景と共に、途中に立ち寄るショースフォッセン滝は必見のスポットです。
運行情報とベストシーズン
• 運行期間: 通年(冬季は運行本数減)
• 所要時間: 約1時間
• ベストシーズン: 5月〜9月(緑豊かな景観と滝の水量が多い)
• 予約方法: 繁忙期(6月〜8月)は必ず事前予約を
見どころ
• キョスフォッセン滝: 列車が一時停車し、間近で93mの落差を持つ滝を鑑賞できる
• フロム渓谷: 急峻な山々に囲まれた美しい渓谷
• フロム: 美しいソグネフィヨルドに面した小さな村
旅行者へのアドバイス
オスロからベルゲンへ向かうベルゲン鉄道と組み合わせると、「ノルウェー・イン・ア・ナッツシェル」というツアーを楽しめます。これはノルウェーの自然美を一日で体験できる人気コースです。夏季は非常に混雑するため、朝一番または夕方の便がおすすめです。
ウェスト・ハイランド・ライン(スコットランド)
映画「ハリー・ポッター」シリーズに登場するホグワーツ特急のロケ地としても知られる路線です。グラスゴーからマレイグまでを結ぶこの列車は、スコットランドの荒々しくも美しい高地の風景を楽しめます。特に夏季は蒸気機関車「ジャコバイト号」が運行され、より一層のノスタルジックな雰囲気を味わえます。
運行情報とベストシーズン
• 運行期間: 通年(ジャコバイト蒸気機関車は4月〜10月のみ)
• 所要時間: 約5時間30分
• ベストシーズン: 5月〜9月(天候が比較的安定し、日照時間が長い)
• 予約方法: ジャコバイト号は人気が高いため、数ヶ月前からの予約が必要
見どころ
• グレンフィナン高架橋: ハリー・ポッターの映画でもおなじみの21のアーチを持つ高架橋
• ベン・ネヴィス: イギリス最高峰の山が見える区間
• ローフォイヤー湖: 深く澄んだ湖の風景
• マレイグ: 旅の終点にある小さな漁村からはスカイ島を望める
旅行者へのアドバイス
ジャコバイト号に乗車する場合は、左側の席がグレンフィナン高架橋の眺めに最適です。天候が変わりやすいエリアなので、晴れた日を選ぶと景色を最大限に楽しめます。フォート・ウィリアムでの一泊をプランに入れると、周辺の自然をゆっくり探索できます。
ベルゲン鉄道(ノルウェー)
オスロとベルゲンを結ぶヨーロッパ最高所を走る鉄道路線の一つです。フィヨルドの国ノルウェーの美しい自然を堪能できるルートとして、世界中の鉄道ファンから高い評価を受けています。
運行情報とベストシーズン
• 運行期間: 通年
• 所要時間: 約7時間
• ベストシーズン: 6月〜8月(夏の美しい風景)、2月〜3月(雪景色)
• 予約方法: NSB(ノルウェー国鉄)のウェブサイトから予約可能
見どころ
• フィンセ: 海抜1,222mの地点にある駅周辺の雄大な高原風景
• ヴォス: 美しい湖と山々に囲まれた町
• ハルダンゲル高原: ノルウェー最大の高原地帯
• ミュルダル: フロム鉄道への乗り換え駅
旅行者へのアドバイス
7時間の長旅ですが、途中下車して宿泊することも可能です。特にフィンセは高山の自然を楽しめるハイキングスポットとしても人気。冬季は雪景色が美しいですが、日照時間が短いため、車窓からの景色を楽しむなら夏季がおすすめです。
これらのヨーロッパの絶景列車ルートは、どれも予約が必要となる人気路線です。特に夏季の観光シーズンは数ヶ月前から満席になることも珍しくありません。旅の計画は早めに立て、列車の予約も早期に済ませることをおすすめします。
また、ヨーロッパでは様々な鉄道パスが用意されています。ユーレイルパスやインターレイルパスを利用すれば、複数国を効率よく周遊できるだけでなく、事前予約料金のみで絶景列車に乗車できることも。ただし、座席予約は別途必要な場合がほとんどですので、注意が必要です。
ヨーロッパの鉄道は季節によって景色が大きく変わります。雪景色を楽しみたい冬、花々が咲き誇る春、緑豊かな夏、紅葉の美しい秋と、同じルートでも季節によって全く異なる景観を楽しめるのも魅力の一つです。自分の好みや旅の目的に合わせて、最適な時期を選んでください。
鉄道旅行の楽しみ方:世界の絶景列車ルートと乗り方ガイド

コメント